山林に自生する榊では、良質なものとしては、風通しがよく適度な日照量のある温暖な場所で生育するものが最高です。
国産榊の代表格である当地方の榊は「伊勢の榊」として高い評価を受けており、その光沢のある濃緑の葉としなやかな枝ぶりは神事用に最適で、全国の神社やご家庭、事業所様で神棚用として愛用されています。が近年その品質を維持できるかどうか危うい状況となってしまいました。

広葉樹林は、それまで薪炭生産のため20年〜30年で更新されていて、副産物の榊もその都度更新されて、良質のものが収穫できていました。
1950年代後半、我が国は燃料革命的なことが始まり、一般家庭での木炭消費量が激減してしまいました。
そのため、広葉樹林はそのままで放置されてしまい、中にはパルプの原料にと、1970年代後半くらいまで更新されていた山林もそれ以来放置されたまま、一方で戦後復興で杉や檜の木材需要が高まり、広葉樹林はそれらの人工林へと姿を変えて、その面積も激減してしまいました。
その結果、現在では日照不足や病害虫の蔓延によって榊の品質低下と収穫量の激減が続いており、地方の過疎化や高齢化で担い手不足も相まって国産榊の安定的な供給は困難な状況となってしまいました。
こうした課題を解決するため、近年では里山再生による広葉樹林の更新促進や持続可能な栽培方法の導入が進められ、生産者や自治体による榊林の共同管理や後継者育成に向けた取組みが始まっています。
